第2回全国生物学コンテスト
生物チャレンジ2009 第二次試験
平成21年8月17日(月)〜20日(木)
広島大学 総合科学部
最先端研究体験について
生物チャレンジ2009第二次試験では、実験試験を行うだけではなく、最先端の生物学研究に触れていただき、生物学に対する志を抱いている参加者同士の交流も深めていただくイベントを準備しています。最先端研究体験は、3日目に数名ずつのグループに分かれて広島大学の生物系学部の研究室を訪問して頂く予定です。このページには、研究体験をすることができる研究室をリストにしています。
なお、多くの学部が集結する東広島キャンパスの研究室を訪問して頂くA班と、医学部・歯学部・薬学部のある霞キャンパス(広島市内)を訪問するB班に分かれて行動することになります。
A班
総合科学部・総合科学研究科
環境生態学研究室
共生微生物学(久我ゆかり先生)
植物の根と糸状菌の共生について研究しています。ほとんどすべての植物の根は、糸状菌と共生器官(菌根)を作り、土壌中からPなどの無機養分を吸収しています。当研究室では現在、電子顕微鏡、蛍光X線分析、同位体顕微鏡などを用いて菌根機能の細胞レベルでの解明に取り組んでいます。その他、根部エンドファイトの共生性、植物土壌伝染性病害制御に関わる土壌微生物等について研究しています。
多様性生態学・保全生態学(奥田敏統先生・山田俊弘先生)
地球上の生物や生態系は、人類の生存基盤そのものに様々な恩恵(生態系サービス)を提供しています。しかしそれらは、人為的影響により急速に劣化しています。そこで私たちは、生態系や生物多様性の実態、機能、そして生態系の維持管理方法などに関する分析を行い、その保全や修復にかかわる適切な管理方法の構築・提案を目指した研究を行っています。
・ 瀬戸内照葉樹林および東南アジア熱帯雨林に関する調査研究
・ 森林環境の劣化指標探索のための調査研究
・ 動植物の相互作用が多様性維持機構に及ぼす影響
・ 生態系サービスの評価および持続的管理に関する研究
総合科学部・総合科学研究科
物性物理学研究室(浴野稔一先生)
私たちの研究室では、極低温で原子を見る事の出来る走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて物質をナノスケールで観察し、原子の配列や電子のエネルギー状態を調べています。現在の主な研究対象は高温超伝導であり、STMで詳しく観察することによりそのしくみを原子レベルで明らかにし、人類の夢である室温超伝導への手掛りを得ようとしています。このようなSTM装置はDNAなどの有機化合物の観察にも用いられており、この分野への応用も進みつつあります。
総合科学部・総合科学研究科
環境運動生理学研究室(長谷川博先生)
スポーツ科学研究領域の運動生理学分野に所属している研究室です。最近の主な研究テーマは、運動時の体温上昇と中枢性疲労の相互連関における脳内神経伝達物質の役割を明らかにすることです。当日は無麻酔ラットを用いて、トレッドミル運動時における深部体温、熱放散反応や熱産生(代謝)反応といった体温調節反応、および体温調節中枢が存在する脳内の視床下部における神経伝達物質のリアルタイム測定を組み合わせた実験系を紹介する予定です。
総合科学部・総合科学研究科
神経分子薬理研究室(斎藤祐見子先生)
ヒトで最大の遺伝子ファミリーを形成するGタンパク質共役型受容体(GPCR)は、新しい薬を創出するための重要な標的となっています。この多数のGPCRから、我々が同定した食欲・うつ不安に関連するメラニン凝集ホルモン受容体(MCH1R)を対象に、細胞内シグナル伝達の新規分子メカニズムを解析しています。本研究室では受容体タンパク質検出実験を自らの手で体験し、さらにヒト培養細胞にホルモンを加えた瞬間に細胞内カルシウム濃度が劇的に上昇する様子も実感してもらいます。
研究室のホームページはこちら;
理学部・理学研究科
私達「理学研究科生物科学専攻」では、多彩で変化に富んだ生物に共通する生命成立のための仕組みや法則を、分子レベルから個体・集団レベルまでの各階層で明らかにするとともに、生物多様化の要因の解明にも取り組み、得られた研究成果をもとにした先進的な教育を行っています。その中で、以下の6つの最先端研究グループを今回皆さんに紹介します。
発生生物学研究室(菊池裕先生)
近年の急激な分子生物学の発展により、生命現象は分子レベルでの理解が大きく進んできました。私達は、小型魚類であるゼブラフィッシュを用いて、細胞の分化・移動を制御する分子メカニズムの解明を目的に研究を行っています。
細胞生物学研究室(細谷浩史先生)
細胞が二つに分裂し増殖していく過程は、生命機能の最も基本的な現象のひとつです。私達は、ヒトのガン細胞および原生動物を用いて、細胞の分裂調節メカニズムの解明を目的に研究を行っています。
情報生理学研究室(道端斎先生)
ホヤの中には海水のバナジウム濃度の1、000万倍ものバナジウムを濃縮している種がいます。私達は、金属イオンの濃縮や還元、濃縮のエネルギー機構に関与するタンパク質や遺伝子をホヤから探索し、その機能解析を進めています。
植物生理化学研究室(高橋陽介先生)
ジベレリンは、植物の成長を促進する植物ホルモンです。私達は、ジベレリンがどのようにして遺伝子の発現を調節しているのかを、信号伝達と転写調節因子の機能制御の観点から研究しています。
植物分子細胞構築学研究室(鈴木克周先生)
バクテリアの中には真核生物に遺伝子を注入する能力を持つものがいます。私達は、このようなバクテリアの特徴や、遺伝子を受取る真核生物側で受取る能力が上昇した、あるいは低下した変異体を得て仕組みや条件を明らかにする研究を行っています。
植物遺伝子保管実験施設(草場信先生)
現在、生命現象解明の上で必要不可欠となっている、突然変異体を利用した「ツール」としての遺伝学についてその実際について紹介します。
理学部・理学研究科
両生類研究施設
本施設は世界最大の両生類研究施設であり、50種、170系統、3万匹の両生類を40年以上に渡り系統維持しており、以下の両生類生物学の研究を精力的に行っています。
両生類のメタモルフォシス(矢尾板芳郎先生)
甲状腺ホルモンにより幼生から成体に形態変化する分子機構の研究を行っています。
卵成熟(古野伸明先生)
卵減数分裂のDNA複製のない2回の連続した分裂を行う分子機構の解明を目指しています。
初期胚の発生(鈴木厚先生)
たった1個の受精卵から始まる生命の神秘を探求しています。
性の分化、環境汚染の指標としての応用(高瀬稔先生)
性ホルモンにより性転換が引き起こされる。そのことを利用して環境汚染状況を把握して、未然に防ぐ。
両生類の絶滅危惧種の保全と透明ガエルの作製(住田正幸先生)
「両生類における種の多様性やゲノムの多様性」についての遺伝学的研究を紹介するとともに、「人工繁殖した絶滅危惧種」や「実験的に作成された透明ガエル」を公開します。
理学部・理学研究科
分子遺伝学研究室(山本卓先生)
ウニは、棘皮動物に属し、進化系統から見ると脊椎動物に近い動物です。ゲノム情報の解読によって、ウニの遺伝子数はヒトとほぼ同じ数と推定され、共通の遺伝子も多く見つかっています。分子遺伝学研究室では、ウニの研究から動物の発生や進化の仕組みを解明することを目指しています。
先端物質科学研究科
私たち「先端物質科学研究科」では、物質・生命・半導体の最先端研究を行っています。その中で、生命機能の解明と活用を目指している4つの最先端研究グループを紹介します。
生命分子情報学研究室(藤江誠先生・山田隆先生)
生物と生物の種間相互作用について、分子生物学的・細胞生物学的な研究を行っています。実施している研究概要の紹介と、植物に植物病原菌が侵入する過程のモニタリング等を行います。
研究室のホームページはこちら;
http://home.hiroshima-u.ac.jp/mbiotech/ichikou/itikouindex.html
代謝変換制御学研究室(加藤純一先生)
優れた微生物機能を発見、解明、そして育て上げることにより、その微生物機能を活用して、有用物質生産、赤潮などの環境問題を解決する技術開発を行っています。
研究室のホームページはこちら;
http://home.hiroshima-u.ac.jp/mbiotech/ohtake_lab/
細胞機能化学研究室(荒川賢治先生)
多種多様な抗生物質を作り出す放線菌について、抗生物質生合成の解明や遺伝子発現解析を行っています。当日は研究紹介に加え、生化学実験の演示なども行います。
研究室のホームページはこちら;
http://home.hiroshima-u.ac.jp/mbiotech/hosenkin_lab/hosen_lab.html
細胞生物学研究室(久米一規先生)
ヒトのモデル生物(線虫・酵母)を用い、癌、老化、脳神経機能の研究を行っています。当日は、GFPで標識した酵母の細胞骨格と線虫の神経を、顕微鏡で観察してもらいます。
研究室のホームページはこちら;
生物生産学部・生物圏科学研究科
動物資源化学研究室(応用生物学)(田辺創一先生)
ヨーグルトの健康機能性を研究しています。特に、腸炎やアレルギーに対する軽減効果について、最新の切り口から研究している自負があります。免疫学・生物学の成果を社会に還元する一例として紹介できればと思っています。
家畜育種遺伝学研究室(ミクロ生物学)(西堀正英先生)
ヒトのDNAは30億塩基対。その中に遺伝子はたったの2万5千個。これは線虫よりもちょっとだけ数が多いくらいです。ではどうやってこの少ない遺伝子で私たちの複雑な体や機能が保たれているのだろうか?ゲノムデータベースの利用(バイオインフォマティクス)から、実際のDNA変異の検出(バイオテクノロジー)まで、研究法の一例を紹介します。
海洋生態系評価論研究室(マクロ生物学)(小池一彦先生)
海洋生態系の縁の下の力持ち達(細菌、微細藻、動物プランクトン)が研究対象です。最近は、これら生物群の究極系ともいえる極限環境微生物、サンゴの共生藻、大型クラゲも研究対象となっています。今回は、サンゴ共生藻を含めた微細藻類の「美」について紹介する予定です。
生物生産学部・生物圏科学研究科
分子栄養学研究室(応用生物学)(矢中規之先生)
生活習慣病と食環境。食品成分や栄養素の生活習慣病に及ぼす影響について、実験動物を用いた生化学の面、また病気に係る遺伝子の側から研究を行っています。特に、肥満と食品成分・栄養素との関連を調べる研究の一例を紹介します。
免疫生物学研究室(ミクロ生物学)(堀内浩幸先生)
昨年ノーベル賞に輝いた緑色蛍光タンパク質。胚性幹(ES)細胞にこのタンパク質遺伝子を導入すると....最新のニワトリES細胞研究を体感しよう!
水圏資源生物学研究室(マクロ生物学)(坂井陽一先生)
海産魚介類の生態研究。ゲノム解析、小型データロガーなどの恩恵を受けて、マンボウやナルトビエイの謎に挑んでいます。また、サンゴ礁魚類の行動生態研究は1970年からの伝統芸。自然状況下の生物情報を収集することの科学的意義は不変です。
B班
医学部・歯学部・薬学部
医歯薬学総合研究科
放射線腫瘍学(永田靖先生)
放射線治療は、手術療法や抗癌剤治療とともにがん治療において重要な役割を果たしています。特に体への負担が少ないために、高齢者にも安全に用いられています。また最近の画像診断技術やコンピュータ技術の進歩が、より精密に照準をあわせた放射線治療を可能としました。本研究室では、最新の照射装置や、治療計画装置、CTシミュレータを導入し、最先端の放射線治療を行っています。
内視鏡外科(岡島正純先生)
本研究室では「匠を科学する」というプロジェクトの一環として、医療技術トレーニングシステムの開発を研究しています。具体的には、基礎的な技術から、高度な技術(手術など)に対応したVirtual Reality Simulatorなどのトレーニング機器と、医療技術の評価機器を有し、医療技術トレーニングの研究と実践を行っています。当日は、見学だけではなく、これらの機器を使った「模擬手術」も体験できるよう計画しています。
統合バイオ(内匠透先生)
我々は、脳機能、とりわけ精神機能の機構解明に取り組んでいます。精神機能、すなわち、こころを如何に理解できるか、また分子を使って説明できるかという問題に挑戦しています。「気持ちは態度に表れる」といいますが、精神の表出系として行動を科学しようということでもあります。生物リズムから精神疾患に至るまでを、分子、細胞から個体レベルで研究しています。
霞キャンパス
医学部・歯学部・薬学部
医歯薬学総合研究科
内視鏡外科(岡島正純先生)
本研究室では「匠を科学する」というプロジェクトの一環として、医療技術トレーニングシステムの開発を研究しています。具体的には、基礎的な技術から、高度な技術(手術など)に対応したVirtual Reality Simulatorなどのトレーニング機器と、医療技術の評価機器を有し、医療技術トレーニングの研究と実践を行っています。当日は、見学だけではなく、これらの機器を使った「模擬手術」も体験できるよう計画しています。
放射線腫瘍学(永田靖先生)
放射線治療は、手術療法や抗癌剤治療とともにがん治療において重要な役割を果たしています。特に体への負担が少ないために、高齢者にも安全に用いられています。また最近の画像診断技術やコンピュータ技術の進歩が、より精密に照準をあわせた放射線治療を可能としました。本研究室では、最新の照射装置や、治療計画装置、CTシミュレータを導入し、最先端の放射線治療を行っています。
解剖学及び発生生物学(青山裕彦先生)
地球上の生き物は、様々な形をしています。例えば、ヒトでは肋骨は胸にしかありませんが、ヘビでは体全体に肋骨がありますし、逆にカエルでは全く肋骨がありません。ひとつの受精卵に始まる生物の形作りの仕組みに、私たちはニワトリの卵の中で発生中の胚(受精卵からひよこに至る間のもの)に実験操作を加えることによって迫ろうとしています。今回は、生きたニワトリ胚に触れ、微小手術を体験してもらいます。
医学部・歯学部・薬学部
医歯薬学総合研究科
循環器内科学(山本秀也先生)
当教室では64断面を一度に撮影できるコンピューター断層装置により心臓の詳細な構造を観察することで、心臓病の診断に取り組んでいます。従来は、カテーテルという細い管を血管の中へ入れて心臓まで進めることで、心筋の栄養血管である冠動脈の狭い箇所を直接見つけていましたが、この検査方法により、患者負担も少なく診断が行えるようになりました。画像を構成したり、実際の診療現場も含めてご紹介します。
分析治療デバイス学(薬品分析化学講座)(升島努先生)
細胞の動きを見ながら、変化の瞬間にその細胞内成分を捕捉して、超感度質量分析により分子群が検出できるように世界で始めてなりました。この手法をLive Single-cell Mass Spectrometry (LiveSC/MS)と名付け、その世界のセンターを作っています。細胞1ヶの体積は、一滴の百万分の一という超微量の世界、その中でうごめく分子をどう見つけ、その機能を解明していくか、今その世界最前線基地として、このセンターは動いています。
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